ページングの基礎

□ページングとその必要性

 最近の発・変電所、各種工場などでは機械の性能向上に伴って、全体の運転はほとんど自動制御化され、極めて少数の人員で大規模で複雑な装置を操作しています。従って各機器の設置場所には、ほとんど人員は配置されてなく、主として中央制御室と少数の操作盤ですべての運転監視と制御操作を行い、運転保守員は、各所を巡回して異状があった時、これを早期に発見して事故を未然に防止するような方法がとられています。

 そこで中央制御室、各操作盤および巡回員相互間の連絡は最も迅速、緊密、確実に行われなければ運転の万全を期することはできない。これを実施するための通信、信号方法として一般に考えられることを挙げると次のようになります。

①電話
 固定箇所間では使用可能だが、巡回員はたえず移動しているため、これを呼び出すことは困難で不確実です。さらに騒音が高い所では通話が不明瞭となる場合がある。

②拡声装置
 巡回員を呼び出すのには便利だが、その場から応答することがでない。

③インターホン
 騒音が高い所では、信号対雑音比が極めて悪く、ほとんど実用にならない。

④報器(ベル、サイレンなど)、表示灯
 意志の伝達に制約を受ける欠点がある。

 以上を考慮して最も合理的に設計されたのが「ページング装置※」である。

※ページング装置の呼び方は客先により、「運転指令装置」「指令通信装置」「指令通話装置」 「ページング装置」等いろいろあるが、
 一般には単に“ページング”と呼ばれている。

 本装置を設置すれば屋内・外はもとより、騒音の大きな場所や可燃性ガスのある場所など、工場内すべての場所相互間で所要の相手を迅速に呼び出し、確実な通話が行えるので完全に相互の意志を伝達し、緊急処置をとることができます。

 従って本装置は発・変電所はもとより、製鉄所、石油精製所、セメント・パルプ・化学・肥料会社などの、特に騒音の大きな所での構内連絡、倉庫・ビル内の一般連絡、岸壁荷役の作業連絡等、その使用範囲は際限なく、特に発・変電所、各種工場などでは正常な運転を行う上の極めて重要な設備の一環として欠くことのできないものとなっています。

ページングの概要

 ページングは、主として多数のハンドセットステーション(送受話装置)とスピーカおよび共通に設けられた増幅器によって構成されています。回路方式は呼出(指令)(Paging)と通話(Party-Line)の2チャンネル音声伝送方式で、呼出チャンネルはハンドセットの送話器出力を増幅し、同系統全部のスピーカを作動させるものであり、通話チャンネルは各ハンドセットステーション内蔵の増幅器で1 個または数個のハンドセットの受話器を作動させるものです。

 ハンドセットステーションおよびスピーカは現場各所に配置され、制御増幅器は通信室(仮称)などに設置される。この運転操作は通常、すべてハンドセットステーションにおいて行い、制御増幅器を遠隔制御して呼出、指令、一般通話、会議通話および警報発令等を回線選択せずに、即時に行うことができる。したがって交換機のような回線選別装置がなく制御増幅器も無操作なので、この装置を運転させるための専任の人員は不要です。

 また客先によっては、運転に支障が出ないように通話を3チャンネル化して、構内工事業者等には運転とは別の通話回線を使用させる例もある。その場合、ケーブルは既設そのままで(2芯シールド線×3本)、回路の工夫により省線式通話3チャンネル方式の製作も可能です。(特許第3048381 号)

ページングの使用法

 通常の状態におけるハンドセットステーションの操作方法は、きわめて簡単で、ハンドセットステーションの代表的な形である屋内壁掛形を例に説明します。

 


①呼び出しまたは指令

 ハンドセットをフックから外し、電話機の送受器で通話するのと同じ要領で送話器に口を近付け、「指令」の押釦スイッチを押したままで送話すれば、構内のスピーカから放送される。

②電話
 発信者は「指令」の押釦スイッチから指を離すだけ、受信者は任意のハッドセットをフックから外すだけで、直ちに通話をすることができる。

③信号発信
 ハンドセットを取リ上げる必要はなく、ただ「信号」の押釦スイッチを押すだけで構内の全スピーカから1KHz の信号音が発せられる。

④傍受
 構内で事故があったような場合、直接自分に関係がなくても、その関係者間の通話を聞きたいことがある。その時は単にハンドセットを取り上げるだけで随時聴取することができる。また割込通話も任意にできる。

ページングの動作

 図1.2 においてチャンネルは通話の状態、フックスイッチはハンドセットがフックに掛けられている状態を示す。(実際には、チャンネル切り替えはリレーで制御している)また制御増幅器は電源が入っている状態です。

 

①呼び出しまたは指令
 発信者はハンドセットステーションにおいて、まずハンドセットをフックから外すと、フックスイッチが動作し、ヘッドアンプが働く。この際ヘッドアンプの電源は、T 回線から供給される。次に「指令」スイッチを押すと、接点1でまずハウリング防止のため自己のスピーカがP 回線より切り離され、接点2によって制御増幅器が遠隔制御され、指令用増幅器が待機状態に移る。

 そして接点3によってヘッドアンプの出力が指令入力回線(C)に接続されているので、送話器に向かって話せば、音声信号はヘッドアンプである基準レベルまで増幅され、指令入力回線によって制御増幅器に送られ、ここで数百ワットに増幅され、指令出力回線(P)を通じて全スピーカから音声が放送される。

 

②一般通話
 発信者は前に述べた呼出の操作によって相手を呼び出した後、「指令」スイッチから手を離して待ち受ける。この時チャンネル切換器(実際には内蔵リレー) は自動的に通話モードに戻る。呼び出された人は近くのハンドセットステーションのハンドセットをフックから外すと、両方のハンドセットステーションは通話 回線によって接続され、電話と同じように通話ができる。


③会議通話

 何人かで会議通話をしたい場合は、第一項の操作によって必要な相手全員を呼び出した後、「指令」スイッチから手を離して待機し、呼び出された人は各々のハンドセットステーションでハンドセットを外せば全員で会議通話をすることができる。また本システムは指令チャンネルと通話チャンネルが独立した2 チャンネル方式なので、会議中さらに別の人を招集して会議に参加させる必要が生じた場合でも、1人が「指令」スイッチを押して呼び出しすることができる。この際通話チャンネルには影響を与えないので、他の者は支障なく会議通話を続けることができる。

④警報信号発令
 本システムは信号付なので、緊急信号または警報信号等を発することができる。ハンドセットステーションの「信号」スイッチを押すと指令入力回線(C)が接地され、本体制御部内のリレーの働きにより発振器の出力が指令用増幅器に接続され、P 回線を通ってスピーカから1KHz の信号音が放送される。

⑤2チャンネル同時使用
 本システムでは、図で明らかなように指令、通話の2チャンネルは回路的に区別されているので、ある一組のハンドセットステーション同士が通話回線を利用して通話中でも、別の組は指令入・出力回線を利用して送話器およびスピーカでプレストークによる別の通話をすることができる。

□ページングシステムの構成
 

 ページングの構成は基本的には上図の様に制御増幅器、各種ハンドセットステーション、それと同数のスピーカ、それにケーブルを分岐するためのケーブル分岐箱から構成されます。

 ケーブル分岐箱は省略されることも多く、その際は各ハンドセットステーションでケーブルの渡りをとりながら布線することになります。

 アンプ(電力増幅器)の容量はスピーカの数で決まり、例えば15W ホーンスピーカを8 ヶ使うとすると 15W×8=120W なので100W アンプ2 台が必要となる。アンプ容量は、過負荷とならぬよう、すべて切り上げて100W単位で計算します。
 
アンプの並列接続は、スピーカケーブルのロスや、アンプの特性のばらつきを考慮すると、最大5 面(500 W)位が限度であり、これを越える場合は、例えば、屋外系と屋内系を分け、各々本体から別にスピーカ回線を布線する等の考慮が必要です。

 ハンドセットステーションとスピーカの組み合わせは、卓上形ハンドセットステーションには木製壁掛形スピーカ(事務所用)、金属製ハンドセットステーションにはホーンスピーカ(現場用)、耐圧防爆形ハンドセットステーションには防爆形ホーンスピーカ(防爆地域用)を通常使用します。ホーンスピーカは10W または15W を使用する場合が多い。

「ページングハンドブック ~指令通話システム~」 (マグナ通信工業㈱発行)より抜粋

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